深海魚の水槽
読んだ本のメモなどを残していく予定です。
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百田尚樹『海賊とよばれた男』
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遠い太鼓』のところに書いたが、今年の正月のNHKラジオの特番で『海賊とよばれた男』の朗読が放送された。うっかり一回分の録音に失敗してしまっていたところ、先日分割再放送されたので無事補完することができた。

 正月の放送のときはあまり作者のことも内容のこともほとんど知らなかったのに、2013年の本屋大賞を受賞したことで、その評判を耳にすることも多くなった。

 この物語は、国岡鐡造という人物を主人公に彼の起こした国岡商店が戦後の混乱期をくぐり抜け、国産の石油精製・販売会社として成長していく姿を描いたもの。鐡造にはモデルがあり、出光興産を起こした出光佐三がその人にあたる。
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谷山由紀『コンビネーション』
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 終了を待ちかねたように、雨は本格的な降りとなった。セカンドベースをわざわざ踏んでからベンチへ引き揚げる名倉を、青年は目で追いつづける。その横顔からはうかがいしれない内面を、男は見透かしように言う。
「うらやましいですかな。あなたも彼と同じ道を選んでいたら、あそこに立っていたかもしれない」
「いいえ」
 青年はきっぱりと否定した。
「ぼくは選ばなかった。機会はいくらでもあった、けど悟ったような顔をしてあきらめてました。気取ってたんですよ、ガムシャラなんてみっともないって。ダメだったらカッコ悪いって」
「後悔してますか」
「いいえ。何度やってもぼくは同じ選択を繰り返したはずです」
 男は大きくうなずいた。

天夢航海』『こんなに緑の森の中』の谷山由紀は、プロ野球にも数知れないドラマがあふれていることを思いもよらない方法で描いて見せた。

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小林秀雄『作家の顔』
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 僕は氏の長篇を次ぎ次ぎに読み、何が大衆を惹き附けたかをいろいろ考えたが、結局それは氏の初期の諸作品にあるオリジナルなものと違ったものではない事を確信した。氏は最初から自分の為にも文学の為にも書かなかった。批評家の為にも作家の為にも書かなかった。ただ一般読者の為に書いて来た作家なのだ。一般読者にとっては、あらゆる文学的意匠は存在しない。ましてや純文学と通俗文学との区別なぞありはしない。彼等は手ぶらで扱われた題材の人間的興味の中にずかずか這入って来るだけだ。そういう小説の尋常な性格を、これが最も見分け難い文壇にあって最初に洞見して依頼にこの洞見の上に立って来た作家だ。「第二の接吻」について作者は書いている、「宮田と倭文子とを中途から結婚させようと思って、『ある結婚』と小みだしまで掲げて、二人を結婚させようと努力したが、いくら小説の中の人物だからといって、イヤなものをどうすることも出来ないのだ。まして、世の親達よ、自分の子供達の望まぬ結婚などを強いる勿れ」
 氏の新聞小説はどれも当り前の事が当り前に書かれている。殊に最近のものはいよいよ当り前になった。そして大衆はまさしくこの当り前な処に最大の魅力を感じているのである。

小林秀雄『作家の顔』
「菊池寛論」より


 今年のセンター試験の国語の問題で小林秀雄の「鍔」が取り上げられたらしく、平均点を押し下げたと話題になりました。センター試験は時間との勝負だから、初っ端から小林秀雄ではペースを乱されて大変だったろうと思います。

 もっともゆっくりと読んでも、私にとっては小林秀雄は難解です。それでもやっぱり好きで、何度も挑戦してみたくなるのですが。

 この『作家の顔』は、小林秀雄の文芸評論、特に作家について取り上げた文章が集められています。発表された時期も戦前のものから戦後まで広く収録されています。
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相馬黒光『相馬黒光の広瀬川』
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 家で養蚕をしたり製茶を始めた頃は、父は県庁の小役人を辞めて地方の何とかいう会社に勤めていて留守がちであったから、自然、母一人で先に立ち、雇い人や作男を連れて遠く離れた茶園まで出張し、万事を切り盛りする。自然、一家の全権を握る女主人のように人は母に服し、たまに父が帰っていても父には訊かないで母の指図を求めそれに従うという風で、父は手の出しようもなかったのです。主人でいながら、ちょうど泊り客のような体裁で、自分の用を足してしまえば手持ち無沙汰ですぐにも勤め先へ戻るばかり。何もしないと決めてしまったら、祖父母への土産一つ買って帰る気もつかなかった父でした。「子供たちにはいいとしておじいさまやおばあさまには何か買ってきていただかなければね、あなた」と恨み顔にいった母を思い出します。弟の文四郎の小さい時分、「母ちゃん。お父ちゃんはいつから居候にきたのですか?」と尋ねて皆をあきれさせ、家中顔を見合わせて笑う中に、母は泣いているのか黙って顔を背けました。

相馬黒光『相馬黒光の広瀬川 第2回』より


 年末年始はいつも聴いているラジオ番組も特別編成で休みになるので、NHKラジオの朗読「海賊とよばれた男」を楽しみにしていた。ところが第3回の放送の録音に失敗してしまって当てが外れてしまった。

 そこでたまっている朗読の録音から短いものを聴こうと思って、選んだのがこの「相馬黒光の広瀬川」。去年こちらも同じNHKラジオで放送していた作家の森まゆみの「女のきっぷ」で取り上げられていたことを思い出したからだ。

「切符」を連想してしまって何か物語が始まりそうなタイトルに感じたけれど、ここでは「気風のいい」の「きっぷ」。明治から昭和にかけて活躍した女性の生涯を紹介する番組だった。
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佐藤謙三(校註)『平家物語 上巻』
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 さる程に、船出ださんとしければ、僧都船に乗つては降りつ、降りては乗つつ、あらまし事をぞし給ひける。少将の形見には夜の衾、康頼入道が形見には、一部の法華経をぞ留めける。纜解いて押し出せば、僧都綱に取り付き、腰になり、脇になり、長の立つまでは引かれて出づ。長も及ばずなりければ、僧都船に取り付き、「さていかにおのおの、俊寛をばつひに捨てはて給ふか。日来の情けも今は何ならず。許されなければ、都までこそ叶わずとも、せめては、この船に乗せて、九國の地まで」と、くどかれけれども、都の御使、「いかにも叶ひ候ふまじ」とて、取り付き給へる手を引き除けて、船をばつひに漕ぎ出す。僧都せん方なさに、渚に上が倒れ伏し、幼き者の乳母や母などを慕ふやうに、足摺をして、「これ乗せて行け、具して行け」と宣ひて、喚き叫べども、漕ぎゆく船の習にて、跡は白波ばかりなり。いまだ遠からぬ舟なれども、涙にくれて見えざりければ、僧都、高き所に走り上り、沖の方をぞ招きける。かの松浦小夜姫が、唐船を慕ひつゝ領布振りけんも、これには過ぎじとぞ見えし。

佐藤謙三(校註)『平家物語 上巻』「足摺」より


 今年の大河ドラマは平清盛が主役だが、評判が悪いらしい。私も地デジ化以降、部屋にテレビがなくなってしまい、居間まで降りていくのが億劫で見ないままでいる。

 しかし、たまたま見た平治の乱の回は、結構おもしろく見れた。好感が持てる作り方をしているのに、数字が低調というのは残念。

 そんなわけで、NHKでは平清盛関連の番組も多い。ラジオの古典講読では「平家物語」を読み進めており、こちらの方は、私もこの角川文庫版を購入して毎回聴いている。
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